"The elusive lights in the water" - about Misao & Syahidah Osman -

アーティストのMisaoとSyahidahの二人展 [Komoremizu(コモレミズ)] が開催される。タイトルの由来は「水の中で揺らめく光」を日本語で当てた造語だ。Syahidahの息子のミドルネーム ”コモレビ” にインスパイアされ、お二方と筆者の3人で考えた。今思えば始めっから彼女らは、そんなコモレミズのようにつかみどころのない、けれども魅力的なアーティストだ。今回の取材でも彼女らはただゆらゆらと、決定的証拠を残さずしてそのアートの魅力を書き起こすという難題を筆者に科した。

Misao(ミサオ)氏は植物や種、海や太陽といった自然のビジュアルや音から得られるインスピレーションを起点に心の赴くままにラインを滑らせる。最近のドローイングはアイコニックでシンボル的なものが多く、なんとなく「これ海かな」とか「これ木っぽいな」と感じるものもあれば、「これはなんですか?」と聞くと「なんだろね笑」と返ってくるものもある笑 「さあ展示会のプロモーションだ」と鼻息荒い筆者の思惑に早くも暗雲がたちこめる。

Misao作の絵本たち。内容は3月8日(2018)から開催の二人展でのお楽しみということにしておくが、誰もがポジティブで幸せな気分になれるポカポカとしたストーリー。過去から現在へと表現スタイルの変遷(挿絵も言葉もシンプルになっていく)を見ることができ、理屈という窮屈な檻から少しずつ解放されていくような印象を受ける。そもそも、言葉に置き換えられるような哲学や感情なら絵で表現する必要はない。根掘り葉掘りと聞くのではなく耳を澄まして目をかっぽじって彼女の作品と向き合ってみようと思う。

流木をベースにしたサンキャッチャー。素敵すぎる。これ、買って家に置く!展示会が開催されるたびに主催者のくせに売り物に手を出しちゃうから商売どころじゃない。けど魅力的なアーティストたちとその作品に囲まれるこの仕事を手にしたことを幸運に思う。太陽の光を集めて輝くクリスタルと大地のパワーで形成された木のコンビを前に、みるみると元気が湧いてくる。そんな「いかにも」なキャッチコピーがすらすらとでてきちゃう笑 Misao氏もまたポカポカと優しいオーラの持ち主だ。やっぱりアートには作り手のキャラクターが宿るもんなんだな。

こちらはSyahidah(シャヒーダ)作。独特の線を持ち味に抽象的な造形や人を題材に表現する。シンガポール、マレーシア、アメリカ、そして沖縄と転々と表現の場を移し、肉親はイスラム教徒で夫はアメリカ軍属。4人の息子たちにも恵まれる。様々な国、様々な立場の人たちとの関わりを経た彼女の作品にも実験と自我の変遷を見ることができる。

そんなSyahidahのアートが感じさせるコンセプトは「個」。「友達として」でも「親として」でも「配偶者として」でもなく、ありのままの自分でいること。人をモチーフに、モノクロで描かれた作品には、愛し合う恋人・妊婦・子ども・ベッドに一人で横になる女、、、といった等身大のポートレイトが描き出されている。色とりどりの水彩作品のシリーズもあるのでそっちも是非、展示会で。今後の制作のプランの一つに、夫の迷彩服をキャンバスにイスラム教出身の妻が絵を描くというなんとも考えさせられる制作も計画中とのこと。

彼女の自宅を訪問した際、息子さんたちが出迎えてくれた。Syahidahは息子さんたちの前でも一人の人として自然体に振舞っているようにみえた。普通(といったら語弊あるかな)、ご家族やお子さんを前に無意識に母親っぽくなったりする部分があると思うが、彼女はあくまで「個」でいることを意識し凛として立っているように見える。筆者(男)の呑気な視点からは到底捉えられない女性の置かれた立場、戦い、そして心意気が存在するのだと彼女と彼女の作品が匂わせる。

ビジュアル作品の制作の傍らで、精神的な側面からアプローチしたエッセンシャルオイルによるセラピーにも従事。アートやその他の活動に一貫して、自然体であることとそこから得られる心身の解放。彼女のアートに触れて是非そのマインドを「理解」するのではなく「感じて」ほしい。

取材のあとにお二人とStockRoomGalleryのDENPA & MORIKAの4人でSyahidahの車にペイント!



今回の取材でお二方に感じた共通点は肩ひじを張らない態度。取材中も(当時開催中の)銀天版展に気をもっていかれたり、「車のペイントのことなんだけど…」とインタビュアー泣かせな彼女らだったけどそれもまた作品の一部。アーティストのコミュニケーション媒体はあくまでキャンバスだから、無理に言葉を引き出すのも野暮だなと、改めてアートとアーティストたちに触れるスタンスを考えさせられた。そんな筆者を彼女らはコモレミズのように何も言わずに、ただゆらゆらと優しく眺めてくれていたのかもしれない。

Stock Room Gallery KOZAのモリカと^^


(Interview/Photography/Words by Stock Room Gallery KOZA)



Misao & Syahidah Osman 二人展

"Komoremizu -Exploring The Escape-"

@Stock Room Gallery KOZA(沖縄市中央2-7-40)

3/8(土) - 3/18(日) 11:00 - 20:00 [※火/水は休廊]

< Opening Party >

19:00 ~ START

-Instagram-

Misao: @misaospencer

Syahidah Osman: @xiahida

Stock Room Gallery KOZA

アートギャラリーStock Room Gallery KOZAのホームページです。 DENPAとMORIKA、SAKU(那覇店)によるアーティスト運営によるギャラリーです。